今日18日は中秋の名月だが、天候もよさそうなので冷酒で月目酒と行きたい。それもできたら京都・大覚寺の大沢池で催される船遊び「観月の夕べ」で平安の風情を楽しみたい。

 とともに49歳で逝った父の命日でもあり、酒好きのDNAを受け継いだ自分として、月を観ながら父を偲び親不孝をわび、感謝の思いを捧げたい。
  それには訳がある。18歳の8月、酩酊して補導されたときに、派出所に引取りに来た父との帰り道、田んぼが広がった上空に煌々と月が輝いているのを、少し酔いから醒めた余輩が「ああ、月がきれいやな〜」と叫んだときに、「馬鹿もん!」と一言、ゲンコツを頭に一発くらった。
 息子の不埒な行動への驚きと、警察に頭をさげねばならなかったことへの父のどうしようもなく情けない気持ちはいかばかりあったろうか。
 余輩は直接言葉で詫びることのないまま3年後に父は、就職の決まらないことをあれこれ気にしながら亡くなってしまった。
  この事は常に自分の心にあり、その後の人生に良くも悪くも影響を与えてきたが、40数年を経て今想うと、涙が出てくる。

 さて、大覚寺に着いたのが5時丁度であった。観月船のチケ
ット売り場から川に沿ってすごい人が並んでいたが、最終8時のチケットをぎりぎりでゲットできた。
 琴とフルートの「荒城の月」などの演奏を聴き、大沢池の周りを歩く。赤白の提灯とともに、楕円状の風変わりな提灯が目を惹く。
  そのうち、船上での法要が執り行われ、しばらくすると月がくっきり上空に張り付いた。
 焼きソバとスーパードライを飲食していて、一度だけ月見の縁側で父が「まあビールぐらい好いだろう」と麒麟麦酒をコップに注いでくれた19歳の頃を思い出した。人知れず月に合掌。
 
 いよいよ船上での観月である。当地は嵯峨天皇の別荘であり、平安貴族は水面に揺れる月を愛でたという。嵯峨芸術大学の男子学生のガイドと女子学生の茶菓の御点前を受けて暗い水面を灯りを消した小船は粛々と滑ってゆく。
 月はあくまでも夜空に独座を得て暗愚を照らすかのごとくである。池辺の紅い灯火や三重塔が走馬灯のごとく揺れている。

 10時過ぎに自宅駅に着いたらなお月がほぼ真上にあり、月光菩薩に癒されたような夕べであった。
                 (2005年9月18日)
 
 
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