他人にはほとんど告げていないが、昨年の10月から地元のマンションを対象にチラシ配りを請け負っている。
その仕事の内容とは、
・大手のS不動産からの受託
・18,9ヵ所の分譲マンションの居住者対象
・集合ポストに1枚1枚ポスティング
・1回に1,200件分ほど配布
・週に1、2回のペース
・自転車で2時間近く要する
・1枚につき1円
・したがって1回1,200円程度、月収7〜8,000円
・源泉徴収なし(収入申告しない?)
というものである。
チラシの内容は「マンションの売却物件を求む」という募集広告であり、顔のイラスト付きで紹介されている営業担当者が、気軽に物件の評価調査を引き受けますというのがアピールポイントである。
3月の社会的な移動時期が最も売買の需要が多く、それには年末、年初の早めに商談をまとめる必要があるので、この時期には週2回も撒いた。最近は離婚で泣く泣く買ったマンションを手放すケースも増えているらしい。
まあ、おかげでチラシをポストに入れる手際もよくなり、作業時間の短縮につながったし、どこのマンションでトイレが使えるかも分かった。
ただし、嫌なことも持ち上がる。マンションの管理人は、だいたい午後5時頃にはいなくなるが、なかには7時を過ぎても帰らない管理人がいる。エイママヨと目をごまかしたつもりでポスティングしていると、監視カメラで見つかって文句を言われたような事態が何度もある。不動産会社に配るなとの警告電話が入ったこともある。それでは、管理人が不在の休日に配ろうとすると、電気工事で管理人が出勤してきていることがあって、様子を伺いに再訪するが、立ち去る様子がなく、無駄足になってしまう。
ある時には、大切な指サックをチラシともどもポストに入れてしまったこともあるし、突風で自転車が倒れてチラシが舞ってしまったり、自転車のベルの蓋を失くしたが、次の日にマンションの前で偶然発見したり、指先が寒さで自由に動かせなかったり、雨に降られたりと、まあ、たいしたことではないが、よく半年間続けてこれたものだ。
とくに冬の出で立ちは、仰々しいものになる。耳隠し帽子に、マスク、ジャンパーに厚手のマフラー、厚手の靴、レッグウォーマー?、指なし手袋…、しかし、身体を動かしていると、途中から汗をかいてしまう。
でも、一番のショックは、ときどき出会う「メール便」配達の奥さんの話であった。封筒を1件配るだけで20円稼いでいるということだ。余輩がコツコツ配っている間に、彼女は10件ほどポストに入れてサッサと立ち去る、それで200円の収入になる。
コストパフォーマンスは、彼女が1時間1,200円ほどになるという。余輩は650円位にしかならない。なんたるちや〜。でも、配る日時に比較的自由がきく分、やむを得ないか。まあ、途中で喫茶したり、ドリンクを買わずに、水筒の水で我慢、我慢。帰宅して1合の晩酌にありつけるではないか。
と思ってたら、このたび突然、不動産会社から4月以降の契約更新にあたっての書類が届いた。
おおっ!1枚2円に倍増だ。チラシを真面目に配ったおかげで売買の成果があったにちがいない。よっし、やったるでぇ、春から縁起がええぞ。適当な身体の運動になって、オカネまで貰える。50肩も完治した。これで古本がまた買えるし、少しは美味しい酒が飲める! そういえば、チラシ配りを始めて、スーパーの中にある古本屋を見つけたし、『酒仙』(南條竹則著)など面白い本もここで買えた。こんな有難い余禄はないよ。動くことだ!
酒神、酒仙のご加護を頂いて、このまま好い方向に循環していってほしいと願う。恥ずかしいしだい。 (2005年3月23日)
チラシ配りの功徳
俳句 淀風庵