花見そして花見酒、花酒は、永山久夫氏の『酒雑学百科』などによれば、「花粉健康法」だったのだ。
 まず、花たちの精霊である花粉を浴びることで、大自然の生命力が取り込める。つまり、癒されるということだ。

 満開の花の下で飲む花見酒には、ビタミンやミネラル、酵素を含んだ花粉が飛び込んできて、栄養学的にも有効である。

 古来、梅、桃、牡丹、菊などの花びらを酒に浮かべて飲む風習が存在するが、これも花の精(エキス)を吸収することにより健康を願ったものである。

 菊酒は、延命長寿の霊酒とされ古くから中国で9月9日の重陽の節句に飲まれているが、日本にもその風習が伝わって歌などに詠まれている。
  草の戸に日暮れてくれし菊の酒(芭蕉)
  夏菊や陶淵明が朝機嫌(井上井月)

 桃の節句には、曲水の宴という奈良時代から行われる、歌詠みの儀がある。この節句には桃の花を酒に浮かべて飲むと、病を除き、顔色を潤すと言われている。
 岸辺に並んだ公卿文人が、酒盃が前を過ぎる前に歌を作っては盃を戴くという、まさに酒と歌の競演である。
 3千年前、中国の周の時代に始まり、日本にも伝わったもので、日本書紀には、5世紀にこの宴が行なわれたことが記されているので歴史は古い。
 
 菅原道真公も890年3月3日宮中での曲水の宴に参宴し、歌を詠んでおり、大宰府天満宮でこの宴が催されるのは、これに因んでのものだ。
 岩まより流れてくたる盃に 花の色さへうかふけふかな(隆信                            朝臣) 盃のなかれと共に匂ふらし けふの花さく春のやまかせ(信定)

 桃の花は「邪気を払う長寿の霊が宿る」ともいわれ、ももは百歳にも通じる。桃花を酒に浸して飲むかつての習慣もこの病を除き、あるいは顔色を潤す効果を期待してのものらしい。

 梅の花びらを浮かべた酒については、万葉の女流歌人が詠っており、まことに風雅である。
 
  酒坏に梅の花浮かべ念ふどち飲みて後には散りぬともよ
                      (大伴坂上郎女)
 
 今年も桜園に遊び、「嗚呼、玉杯に花浮けて」、大いにリフレッシュしよう!                   
                  (2005年2月6日)


 
 
 
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