カフェといえば、ドトールからスターバックス、漫画喫茶、そしてインターネットカフェへと新形態店がぞくぞく登場している。
 
 余輩なんぞ、照明が明るく、禁煙すぺースが明確に区切られており、本を読んで1時間以上粘れて、カップ入りの紅茶が美味しいという条件で、エクセルカフェを愛用している。
  たまに商店街の昔ながらの純喫茶に入ると、懐かしい気分に浸れ、新聞や雑誌も置いてあるので、これまた落ち着けるが、少々高くつく。

 ところで、最近読んだ古い本『江戸たべもの歳時記』に銀座のカフェー競争物語があり、面白かったので紹介させていただく。
 時代は明治末から昭和にかけてのことであり、カフェーとは食事、喫茶、酒を女給が給仕する新興のレストランのことだ。
 このカフェー競争には時の有名作家が絡んでいるのも酒と文芸という視点からみて興味深い。

★カフェー・ライオン
 銀座4丁目角(現日産ビル)に明治42年に開店。白いエプロンをかけ、エプロンの紐に鉛筆をぶら下 げて、ひらひらと食卓の間を動く、けなげな働く女 性が登場。
 高村光太郎などがよく通ってはビール瓶の山を作った。

●カフェー・タイガー
 現在の森永の所に、大正13年に開店。
 女給は芸者風、女学生風、奥様風を取り揃えて、客の好みに応じる。また、赤、紫、青組に女給を分 けて売上を競わせたため組同士で客の奪い合いとなり、色っぽいサービスを競う。
 永井荷風は尽きに20回位通い、酒を飲むときは閉店まで粘って、女給たちと汁粉屋で落ち合った。
 菊池寛も女給の人気投票に150票(ビール1瓶で1票)を投じて、ひいきの女給をナンバーワンにしたエピソードもある。ただし、そのビールは投票翌日に飲まずに持ち帰ったそうだ。

▲カフェー・クロネコ
 銀座2丁目の松屋の並びに昭和2年に開店。
 2階が汽船のような外観、階下はイナイイナイ・バーという人を食った名のバーで、内部はお寺の本堂にかたどってあり、時々お経のレコードの音が聞こえる。女給の名も妙蓮、貞月など尼さん気分を出していた。
 店には広津和郎の小説『女給』のモデルになった女給がいて、話題となった。この女給は、ある事件で警視庁に呼ばれたが、調べが済むと警視庁の廊下をチャールストンのステップを踏みながら引き揚げた、という下りがこの風俗小説に出てくるそうだ。

 「純喫茶」という名称の謂れは、これら女給サービス付きのカフェとは区別して、純然たる喫茶店であることを示さんがためであった。
 なお、最近では監獄居酒屋などが出現しているが、カフェー・クロネコのゲテモノ路線の範疇に入るものだ。
                     (2005年6月4日)

 
 
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