朝から、真下の樹林で蝉時雨。真夏である。
昼前から2時間かけて、マンションにチラシ配り。汗びっしょり。おまけにハンカチ忘れた。途中、ホームセンターに立ち寄り身体を冷す。
管理人が休日にかかわらず出勤していて、「お暑いのにお疲れさん」なんて、慇懃丁重にチラシの投函を拒絶した。実直な忠勤ぶりは範たるに値するが、無法とはいえ余輩の労に対し極めて無礼であろう。
そんなこんなで、自転車をこいでいて、高校生時代の夏休みにやったアイスキャンデー売りを思い出した。
自転車にアイスキャンデーの入ったボックスを積み、まず、海水浴場に行ってリンを振ってみたが、誰も近寄ってこなかった。海の家などの業者の商売を邪魔するのも気兼ねだし、重い自転車を砂浜まで乗り入れにくいのも難点だった。
ではと、農家が多い部落ならキャンデー売ってる店もなかろうからと、遠出をしてみた。部落から部落の合間の田んぼが周囲に広がる道はかんかん照りのでこぼこ道である。
静まり返った昼下がりの部落、やっと1軒、路に面した窓から男性が顔を出し、2本注文してくれた。大事な商品はかなり融け始めていた。ちょっと不満そうな客の顔、だが受け取ってくれた。
これ以上、どんどん奥地に行っても、解ける一方だ。しかたなく、みじめな気持で帰途についた。
戻ると、キャンデー屋の主人もがっかりした顔をして、使い物にならないぶざまなアイスキャンデーをボックスから取り出し勘定した。
行商戦略が拙かったのか、もともと効率の悪いバイトだったのか分からなかったが、この仕事を1日で辞めた。
まもなく、同級生の誘いで海水浴場にあった足漕ぎのミニカート場のアルバイトにありついた。幼い子供を乗っけたり、カートを動かすのが仕事だった。
ある日、浜辺のステージでラジオ公開番組が催され、仕事を抜け出して見に行った。音楽の題名を聴衆が挙手して当てるクイズ番組であった。余輩は、たまたま楽団のいないコンサート講演会で知った曲
「中国の太鼓」が出題されたので正解。舞台に上がって、掴み取りでもらった賞品の瓜を持って嬉々として仕事に戻った。
運悪くミニカート場の御かみさんがのぞきに来ていて、冷たい目で睨まれることとなった。
まもなくのこと、切符売り場をのぞいたとき、そこを担当していた同級生が怪しげな態度をとった。証拠があるわけではないが、ネコババをしたかなにか、後ろめたいことがあったのだろう。
現在、その友は東京におり、たまの付き合いはあるが、昔話とはいえ、冗談にも聞けないなあ…。
ワンスアポナタイム イン ミドサマー…このあたりで思い出を留めておこう。 (2005年7月18日)
少年時代の真夏物語
俳句 淀風庵