年末に大阪の茨木市にある富士正晴記念館に行った。富士正晴さんは徳島の出身だが、詩や小説、評論そして文人画を大阪で書き続けたちょっとエキセントリックな人物である。
 
 それは、市立図書館に併設された小さく質素なものであるが、氏の経歴・写真や多くの著書を目前にして、27年間東京住まいだったことあって、同じ関西人でありながらこのような存在の人を知らずに過ごしてきたことを恥じ、残念に思った。氏は17年前に亡くなられていたのである。

 氏を知ったのは、清酒諸白の発祥の地、伊丹市にある白雪の酒造メーカーの直営店内にある小さな酒専門の図書室で、氏の著書『酒の詩集』を見かけてである。
 古今東西の酒の詩が編纂されており、氏の12編の酒詩も載っている。
 
 早速、大阪梅田の古本屋街を、このカッパブックスの本がないか探し歩いていたら、ある書店の主人が親切にホームページで探してくれ、天神橋筋の某古書店にあるよ、と教えててくれたので、すっ飛んで行って買い求めた。昭和48年の初版本で450円の定価のものが850円と、私には少々高かったが、欲しい物を手に入れた感動は大きく、とりあえず商店街のドトールで胸躍らしてパラパラ読んだのだ。
 
 当書は12章からなり、「楽しむ酒」「悲しむ酒」「笑う酒」「恋うる酒」「ものうい酒」「愁いの酒」「勇み酒」「狂い酒」「やけ酒」「ぐち酒」「懐かしむ酒」「旅の酒」として章頭に記された富士さん自作の詩のひょうひょうたる面白さは比類なきものがある。

 そして、ロバート・バーンズというスコットランドの酒飲みの詩人がいたことを知るのもこの書のおかげで、後にバーンズの詩集を大阪中央図書館で借りたりして、「酒と詩歌句集」という私のサイトのページにに加えさせていただいた。
 
 酒で悲しさも苦しさも飄々と乗り越えて、また酒に酔うことでいろいろな人生のあやを感得しながら創作のばねにできる氏のような人生って素晴らしいなぁと、今日も『酒の詩集』に目を通しながら思うしだい。
 
 なお、氏の書かれた『一休』(筑摩書房・日本詩人選)の漢文訳もくだけた現代語を使っており、書全体が一休禅師と富士さんの悪戯っぽさやひょうきんぶりが共鳴してるかのようで面白い。
                 (2005年1月3日)


 
 
 
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