まさに若葉風のみどりの日。 この日は京都・鳥羽の城南宮で恒例の 曲水の宴(うたげ)が催される。もともと は3月の桃の節句に行なわれた宴である。
2時から3時までに行なわれるが、開宴の白拍子の舞には間に合わず。
やっと、全体を見渡せる場所を探す。一面コケの生え揃った、こじんまりした 庭園の中をせせらぎのような流水が蛇行 しながら横切っている。
その岸辺の随所に平安装束の男女が坐って歌を詠み、短冊にしたためる。詠み終われば、流れ来る木製鴛舟の上 に置かれた楕円の塗杯から酒を頂けるというもの。
童子が2人、流れる酒盃を竹 ざおでたぐり寄せたり回収したりする。 最後に宮司が詠まれた歌を高々と吟じ るという、まことに雅な平安を偲ばせる宴であった。
宴の終了後、一般の参拝客人がひと形の紙に願い記して水に流す行事が行なわ れた。余輩はあつかましくも、流れの間 近に侵入してカメラで撮影した。流れは思ったより早かった。
折角の風情、見物人にも一杯振舞われてしかるべきかと、あつかもしくも思う。
この城南宮は平安時代末、白河上皇が設営された離宮であり、歌会、流鏑馬などを楽しまれた場所である。そして、鳥羽上皇などが熊野詣へ出立する場所で
もあり、7日間籠り禊をされたという。
また、幕府軍と討幕軍による鳥羽伏見戦争の火ぶたが切られたのが、当宮の敷地であった。
散る花をけふをまどゐの光にと
波間にめぐる春の酒盃(後京極摂政)
盃のながれとともに匂ふらし
けふの花さく春のやまかぜ(信定)
岩まより流れてくだる盃に
花の色さへうかぶけふかな(隆信長臣)
(2005年4月29日)
城南宮・曲水の宴へ
俳句 淀風庵