新聞の報じるところによれば、今月26日に市民グループが「磯田俊夫一周忌―ネオン太平忌」を堺市で開くそうだ。本当に久しぶりに磯田さんの名前と写真を目にした。
 
 数十年前に大阪でアルサロと称すキャバレーが出現したが、これはプロのホステスでなく、人妻や学生、OG(オフィスガール、現在ではOLと呼ぶが)などアルバイトの素人ホステスが接客するという
うたい文句で、男心をそそり人気を博した。
 この発案者が磯田さんであり、余輩は学生時代に千日前にあった、当の大劇地下サロンにおいてボーイとして2ヵ月ほど勤務していたのだ。
 
 その応募者の面接に立ち会われたのが、磯田支配人であった。12月のあわただしい時期で、地下の薄暗い事務室で面会した。計算すれば、当時45歳のホッソリした方で、キャバレーの支配人には思え
ない紳士的で柔和な方で、ここに勤めたボーイ達の記念集合写真を貼ったアルバムを見せてくれたり、大学のことを興味をもって聞かれたりしたので、安心して働く気になったのだ。
 
 夕方、店内清掃をして、早飯を近くの食堂ですませ、5時過ぎには新米の余輩は入口で“らっしゃいませ”と白い上着と帽子を着用して、呼び込みに精を出す。客が入り始めるとフロアに専従する。
 クリスマスの頃にはパーティ券を買った客が押しかけドンチャン騒ぎになり、クリスマス明けには我々従業員の慰労会が行なわれたりもした。このときばかりはホステス嬢にわれわれが慰労され、大い
に酔い、そのままホールの椅子で寝てしまった。隣にオカマぽく、よくリンゴなどをむいてくれた調理の男性がもぐり込んでいたのには驚いた。
 こんな思い出をつくって、当初15番目位のボーーイであったのが、辞める頃には9番ボーイとなっており、キャンパスに行くとラテン音楽のバンドの名前にちなみ、余輩を「キューバンボーイ」と呼ぶ
クラスメイトもいた。

 ところが新聞を読むと、磯田さんは織田作之助氏のまな弟子であり、『ネオン太平記』などの小説家としても名が通っていたのである。余輩はずーと東京が長かったので、マスコミ等での磯田さんの活躍
を目にしていなかったのは残念。
 しかし、今回催されるイベントでは、磯田文学の真髄を見直そうと、磯田さんの原作を今村昇平氏が脚色し、小沢昭一氏が支配人にふんする映画を上映したり、生前の磯田さんが織田作の思い出を語った
映像を流したりするという。
 
 懐かしい時代を甦らせるために、ぜひ参加しよう。余輩のボーイ姿の映った写真があったはずだが、残ってることはないだろうな…。    
                  (2005年6月10日)
 

 
 
 
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