幕末において長岡藩士であったといわれる俳人・井上井月は前半生には、崇めた芭蕉が辿った奥の細道や東海道、近畿、北越などを行脚しており、各地の俳人2百人と交わっています。
 しかし、後半生の30年は信州・伊那谷を流浪し、最後は乞食のような状態で明治20年に野たれ死にしています。 生涯で1千7百句ほど詠んでおり、作風は主情的、ロマン主義的であり、蕪村に近いともいわれます。
 一茶と同様、酒は行く先々で饗されることが多く、ほろ酔い酒を好んだようです。同じ漂泊の俳人たる山頭火は、この井月を心の糧とし、遂に墓前に参ることができたのです。        由 無
   参考:春日愚良子『井上井月』(蝸牛俳句文庫)
      矢島井聲『新編井上井月俳句総覧』(日本文学館) 
井月の漂泊酒句
創作句集 
酒の詩歌句集目次
酒風呂を客にすすめて春の雪
山笑う日や放れ家の小酒盛
きき分る酒も花まつたよりかな
春の日や小半酒も花心
翌日しらぬ身の楽しみや花に酒
乞食にも投盃や花の山
梅が香や日向へ廻す酒袋
酒有りといふまでもなし梅の宿
しら梅と呼たき酒の薫哉
寝て起きて又のむ酒や花心
不沙汰した人も寄合ふ煮酒哉
石菖や焼酎店の明け放し
酒の味かはらぬ老いの機嫌かな

夏菊や陶淵明が朝機嫌
淵明も李白も来たり涼み台
夏菊や蔵の杜氏の朝掃除

露の菊酒かもす家の暖かさ
酒を売る家に灯はなし遠砧
早稲酒や難波長者の笑ひ声
早稲酒や店も勝手も人だらけ
早稲酒や自慢せぬまに誉められる
早稲酒や人の噂も其の当座
早稲酒に誉めそやされつ旅角力
善しあしは客の儘なり今年酒
杉の葉も自慢ごころやことし酒
老松も友鶴もあり古酒新酒
酔醒や夜明けに近き雁の声
鴫鳴くや酒も油もなき庵

酒となる間の手もちなき寒さ哉
雪散るや酒屋の壁の裏返し
袴着や酒になる間の座の締り
若後家のあたりに酔うて年忘れ
河豚汁や女だてらの茶碗酒
酒さめて千鳥のまこときく夜かな
酒といふ延齢丹や冬籠り
よき酒のある噂なり冬の梅
初空を心に酒をくむ日かな
觴(さかづき)に受けて芽出たし初日影
酔さますあたりに近き花若菜





 

 
 
 
 

 
 
 井上井月(せいげつ)
1822〜1887年
長岡藩士、幕末から明治にかけ、芭蕉を慕って奥の細道を辿り、信州伊那を30年間乞食俳人として流浪、明治20年65歳で野垂れ死にする。
お墓したしくお酒をそそぐ
お墓撫でさすりつつ、はるばるまゐりました
駒ヶ根をまへにいつもひとりでしたね
供えものとては、野の木瓜の二枝三枝
井月墓前での山頭火の句記
(昭和14年5月)
俳句 淀風庵
俳句
吟酒浪漫行
山頭火吟遊酒句
一茶ほろにが酒句
芭蕉・其角の洒落句
井月の漂泊酒句
蕪村ほんわか酒句
続・山頭火吟遊酒句
近現代酒句選
近現代酒句選(続)
俳人漱石の酒句
平成吟醸会メモリアル
創作詩集りべーら
淀風庵へのお便り
酒歌つれづれよしな記
四季折々の酒句(夏)T
四季折々の酒句(夏)U
四季折々の酒句(秋)T
四季折々の酒句(秋)U
欧州
中東
中国
中南米
米国
韓国
四季折々の酒句(冬)T
四季折々の酒句(冬)U
四季折々の酒句(冬)V
民歌謡
粋歌
川柳
古詩歌
短歌
全国蔵々紀行句
四季折々の酒句(春)