一茶自身は日記によれば、酒豪であったようですが、生涯に2万句を詠んだにしては酒句は多くありません。
 本人が酒を愉しんで粋に詠った句とともに、節日や歳時に酒を愉しむ姿を観察して詠んだ句があり、それも、風情をさらりと切り返す一茶ならではの軽妙さがあふれています。       由 無    参考:半藤一利『一茶俳句と遊ぶ』、藤沢周平『一茶』
      荻原井泉水『一茶俳句集』、嶋岡晨『小林一茶』
一茶ほろにが酒句
創作句集 
酒の詩歌句集目次
好きな一茶の十句
 とそ酌もわらじながらの夜明哉
 供部屋がさわぎ勝ちなり年始酒
 春の風艸にも酒を呑ますべし
 梅咲や泥わらじにて小盃
 梅咲くや現金酒の通帳
 花咲くや日傘のかげの野酒盛
 上下の酔倒あり花の陰
 引っかける大盃に胡蝶かな
 酒好きの蝶なら来よ角田川

 大酒の諫言らしや閑古鳥
 盃に散れや糺すのとぶほたる
 相伴に蚊も騒ぐなく菖蒲酒

 酒冷やすちょろちょろ川の槿哉
 名月や石の上なる茶わん酒
 名月や茶碗に入れる酒の銭
 名月や芒に坐とる居酒呑
 酒尽て真の座に付(つく)月見哉
 婆々どのが酒呑みに行く月よ哉
 菊の日や呑平を雇ふ貰ひ酒
 菊園や歩きながらの小盃
 酒臭き黄昏ごろや菊の花
 酒買て見て貰ひけり菊の花
 酒のまぬ人入るべからず菊の門
 猿の子に酒くれるなり茸狩
 松苗も風の吹く夜のしん酒哉
 杉の葉を添えて配りし新酒哉
 行く秋を唄で送るや新酒屋
 山里や杉の葉釣りてにごり酒
 杉の葉をつるして見るや濁り酒
 杉の葉のピンと戦ぐや新酒樽
 八平衛が破顔微笑や今年酒

 はつ時雨酒屋の唄に実が入ぬ
 酒菰の戸口明かりやみぞれふる
 ほだの火や小言八百酒五杯
 から樽を又ふりて見る夜寒かな
 雪降れや貧乏徳利こけぬ中
 古利根や鴨の鳴夜の酒の味
 寝酒いざとしが行うと行まいと
 大火鉢またぎながらや茶碗酒
 白水の川の出来たと寒造り
 寝酒いざとしが行うと行まいと
 



                                                                 
 
 
 
 

 
 
    小林一茶
1763年信濃の寒村に生まれ、15歳のとき継母との不和で江戸へ奉公に出されるが、詳しい消息は不明。25歳にして俳人としての名が知れるようになり、西国を漂泊、30余年ぶりに帰郷、妻を二度迎えるが失敗。中風発作で急逝、享年65。
ちる花や已おのれ下り坂      秋風やあれも昔の美少年
月花や四十九年のむだ歩き     秋の夜やせうじの穴が笛を吹
かかる世に何をほたへてなく蛙   名月や家より出て家に入
名月や膳に這よる子があらば    出る月や壬生狂言の指の先
露の世はつゆの世ながらさりながら ぽっくりと死ぬが上手な仏哉
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