「小唄万葉集」が作られるほど元禄の頃から
吉原などの廓で盛んになった小唄は、明治以降、音曲は粋で
あっさりしたものへと洗練され、酒間にはなくてはならぬものになりました。酒を詠った粋な小唄を紹介しましょう。 由 無
参考:芝田喜三代『酒』
平山芳江編『小唄集』
粋 酔 小 唄
月はおぼろに冴えもせず、心はとぢて浮きもせず。
どうしたらよかろやら、ままよ酒もってこい。
「酒は涙か溜息が心の憂さの捨てどころ」
逢いたさに、来て見れば酔うて、そのまま寝てしまい、後は泣くやら。じれるやら。愚痴をならべて、ままよ、ままよ今夜も明日の晩も、呑み明かす茶碗酒。
「逢えば泣く、逢わねば、なお泣く泣かせる人に。なんで泣くほど逢いたかろ」
酒と女は気の薬サ。とかく浮世は色と酒。ささちょっぴり、つまんだ悪因縁、南まいだ、南まいだ。地獄極楽へずっと行くのも二人づれ。わしが欲目じゃなけれども。
お前のような美しい、女子と地獄へ行くならば閻魔さんでも地蔵さんでも、まだまだ鬼ころし。
酒のめば、いつか心が春めきて、借せんとりも鶯と、寝ぼけ先生
よまれたり。
それでは先生困ります、所詮暮にはできません、まづ春永に。
わけもないこといい立てて、又かんしゃくの茶碗酒酔うた酔うた。ぐちな一人ごと。エエどうなと、おまはんの勝手におしなはいな。いいがかり、まけおしみ、あちら向いて、こちら向いて、あちら向いて仲なおり。
「岩がねも、透す力の、あの酒さえも。器うつわに、したがうぞ、 めでたし」
お酒のめのめとろりこしゃんと のんで浮かれて夜が更けりゃ
気らほがらに千鳥足。
ビールのめのめとくとくぐっと、干してまたのむこの気持ち
酔ってくだんの坂の上。
ふらりふらふら呑んべえ同志、もつれからまり肩くんで
歩きゃそのうち朝となる。
月はおぼろに
逢いたさに
酒と女
わけもないこと
酒呑めば
お酒のめのめ