玉子酒と生姜酒は、いかにも暖かく風に効きそうな、昔から飲まれている清酒をベースにした薬用酒のようなものです。なお、酒の飲めない人には、アルコールを除いた作り方があるようです。
鰭酒(フグ)、寝酒とともにいずれも冬の季語です。
由 無
四季折々の酒句(冬)U
親も子も酔へば寝る気よ卵酒(大祗)
いざ一杯まだきににゆる玉子酒(蕪村)
沫を消す内儀老いたり玉子酒(召波)
かりに着る女の羽織玉子酒(高浜虚子)
我背子が来べき宵なり玉子酒(尾崎紅葉)
定宿の馴れしあつかひ玉子酒(田畑美穂女)
瓶太し玉子酒ともいへぬ量(中村汀女)
年下の亭主持ちけり玉子酒(五所平之助)
絵襖をとざしあたたむ玉子酒(橋本鶏二)
母の瞳にわれがあるなり玉子酒(原子公平)
ぬくめあふ老のこころや玉子酒(鈴木俊晃)
岡惚で終りし恋や玉子酒(日野草城)
生姜湯に顔しかめけり風の神(高浜虚子)
生姜湯や生きて五十の咽喉仏(石塚友二)
夜に入りてはたして雪や生姜酒(水野六江)
老残の咽喉にひりりと生姜酒(宮下翠舟)
夜の炉に僧のたしなむ生姜酒(岡安迷子)
生姜湯に薄汗をして更けしかな(大野林火)
生姜酒うつる世相になじまざる(阿部鴻二)
鰭酒や逢へば昔の物語(高浜年尾)
ひれ酒に酔うて夜更けてわれはなし(森川暁水)
鰭酒に酔ひし姿も女形(仁村美津夫)
ひれ酒に酔うて怒涛が見たくなる(鈴木松山)
鰭酒も春待つ月も琥珀色(水原秋櫻子)
鰭酒にさすらひ人の如く酔ひ(五所平之助)
ひれ酒にすこしみだれし女かな(小絲源太郎)
鰭酒や海へ出てゆく夜の雲(斉藤梅子)
鼻焦がす炉の火にかけて甲羅酒(河東碧梧桐)
炉びらきや雪中庵の霰酒(蕪村)
降りかかる霰の酒の寒夜かな(貞徳)
いやなことばかりの日なる寝酒かな(草間時彦)
あとは寝るだけの酒あとひきにけり(中村伸郎)
寝酒あはれ哀れは寝酒のみならじ(石塚友二)
永らへてみても好し悪し寝酒かな
いい奴が先に死んだる寝酒かな
寝酒おき襖をかたくしめて去る(篠田梯二郎)
身一つに生きて寝酒の背なのあり(永井東門居)
なさけなくなる歌よみの寝酒かな(石原八束)
老眼鏡箸置きにして寝酒飲む(猿山木魂)
たのむぞよ寝酒なき夜の紙衾 (芭蕉)
寝酒いざとしが行うと行まいと(一茶)
寝酒したしくおいてありました(山頭火)
俳句 淀風庵
玉子酒
生姜酒
鰭
甲羅
霰酒
寝酒