田村隆一のウイスキー讃詩
田村氏は戦後詩人として偉大な足跡を残されているが、スコッチの大の愛好家であり、「金色のウイスキー」、「金色の液体」という愛着の表現をよく用いている。ここまでほれ込まれたウイスキーも羨ましい限りであるが、『青いライオンと金色のウイスキー』という詩集や実際に本場スコットランドを旅してのエッセーも著している。
なお、氏は酒のエッセー本の編集を2冊ほど担当するほど、文学の世界では酒好きで通っている。『この金色の不定形な液体』(新潮社、1979年)と『日本の名随筆・酒』(作品社、1983年)である。 由 無
参考:田村隆一『スコッチと銭湯』(角川春樹事務所)
同『この金色の不定形な液体』(新潮社)
きみが眼ざめるとき
どんな夢を見る?
青いライオンに追いかけられて
地の果てまで?
それとも死んだ男と抱きあって
金色のウイスキーを飲みながら漂流する?
朝 二日酔の電話のベルが鳴る
きみは鉛の腕をのばす
ああ 怖い夢なんか見ていなかったのだ
青いライオンも
金色のウイスキーも
………
青いライオンと金色のウイスキー
田村隆一
1923(大正12)年東京生れ。明治大学文芸科入学、海軍兵士で終戦を迎える。
昭和22年黒川三郎、鮎川信夫らと詩誌「荒地」を創刊。ハヤカワ・ポケット・ミステリの責任編集長を経験。高村光太郎賞受賞。
田村隆一座右の言葉
鎌倉の
谷戸の奥にぼくの小さな家があって
その裏山をのぼりつめると
秋の風が吹きぬけて行く
落葉には
秋の風がしみこんでいて
どうして枯葉には
いろいろな色がついているのだろう
葡萄酒の色 琥珀の色 モルトの
ゴールデン・メロンの色
きっと風によっては飲む酒がちがうのかも
しれない
………
秋の黄金分割
1.良酒あらば飲むべし。
1.友来らば飲むべし。
1.のど渇きたらば飲むべし。
1.渇くおそれあらば飲むべし。
1.いかなる理由ありといえども飲 むべし
(英国18世紀の賢人・オールド リッチ博士の言葉)