ジノビエフ自身の詩と風刺画からなる『戯画詩集酔いどれロシア』から2編を紹介します。ロシア人といえば、アルコール度の強いウオッカが切り離せない。共産主義の圧制の中でも飲んだくれ、へべれけ、二日酔、アル中が町にあふれており、その様相を反体制派の著者がシニカルに描いたのが本著である。ただし、アル中は生理的な現象で、酔いどれは社会的現象である、という彼の言葉のもつ意味は深いものがある。酔いどれとは、社会的に心から適応できず酒に逃避する知識階層のことなのだ。                                                由 無
  参考:アレクサンドル・ジノビエフ作、川崎浹訳『戯画詩集 酔いどれロシア』(岩波書店)
ロシアの酔いどれ詩
誰といつ、どこで、どう呑むべきか
国境警備隊の望楼で呑め、
森の中で、車寄せで、橋の上で呑め、
砲兵陣地で呑め、歩兵になって呑め、
車両で呑め、舞上がって機上で呑め、
ミーティングで呑め、病院でも呑め、
美術館で、寺院で、水洗便所で呑め、
 ……
食事の前に呑め、食事の後にも呑め、
成功して呑め、また不幸ゆえに呑め、
会計の係とも呑め、旋盤工とも呑め、
共産青年同盟と党のおえら方と呑め、
イスラム教徒と呑め、仏教徒と呑め、
経理主任と、坊主と、芸術家と呑め。
独りで酔うも、コンパで酔うも、
瓶から呑むも、コップで呑むも、
ちびっと呑むより、たんと呑も、
いつでも、どこでも、誰とでも。
  アレクサンドル・ジノビエフ
1922年生まれのロシアの論理学者、作家。
反スターリン主義者を貫き、1978年ミュンヘン滞在中に市民権を剥奪されて亡命。
作品には『幻惑の高み』『カタストロイカ』。
この世の煩い
言葉じゃなしに、身をもって、
知ってるよ、心の病を癒すには、
ロシアのウオッカにしくはなしと。
魂が悩むも、わけありのこと、
あくせくするも、わけありのこと、
さあ、へべれけに呑もうじゃないか。
塀の下の泥土にへたりこみ、
正体なくして眠りこむ。
で、みんなが一キロ先から嗅ぎつけている、
お前さんが浮世の煩いをばかにしていると。
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