ピエール・ロンサールはフランスのルネサンス期の国民詩人です。音楽的なリズムを内蔵する彼の詩に、イマージュを刺激された20人以上の音楽家が曲をつけており、その詩は200以上を数えます。
 また、ロンサールは薔薇を詠った詩人としても代表的で、「ばらは神々の香り ばらは乙女のほこり」など薔薇の美しさと儚さを、乙女に重ね合わせています。今では、むしろ「ピエール・ドゥ・ロンサール」は薔薇の名前として愛好家に親しまれていますね。
 紹介する薔薇や酒の詩にも、古代のバッカス酒神やミューズ詩神を称えるかのようで、大らかな人生謳歌の気風が現れているようです。 由 無
        参考:井上究一郎訳『ロンサール詩集』
ロンサールばらと酒詩抄
ば ら
酒にばら そそがなん、そそがなん、酒にばら。
つぎつぎに 飲みほさん。
飲むほどに、胸深き悲しみは 消えゆかん。

美しき 春のばら、教えるよ、オーベール、
この時を たのしめと、若き日の、青春の、
花の間を たのしめと。
・・・・
きのうなり、ブリノンとともに飲み、語りしは。
あわれ、今日 はや葬り、いささかの 灰となり、
残れるは 名のみなる。
・・・・
ばらは神々の香り、ばらは乙女のほこり。
高貴なる黄金よりもよろこびて、
その胸にかざるなり、初花を。
・・・・
われもまた ばらの冠、こはわれの 月桂樹。
いざ呼ばん、酒神を、よき父を、飲ましめん、
百のばら 侍らせて。

うつつなし、バッカスは、くれないの はなびらに。
ばらはそのつねの友。
葡萄棚、その下に、しゃつはだけ、飲む夏も。


埋もれてくさる死骸から 自然が何かを生むならば、
また新しい発生は 腐敗によって起こるなら、
生きていたあいだ飲んでいた この快男子ラブレーの
胃や腹からは一本の 葡萄が生えてくるだろう。

どんなに早く陽が出ても、飲まぬ姿を見ぬはなく、
夜は夜でいかにおそくても、飲まぬためしはついぞなく、
乾ききったるこの御仁、夜ひるなしの飲みつづけ。

だが酒飲まぬ詩の神は、この飲み助をこの世から
さらっていまやアケロンの大河のひざの濁流の
波に沈めて飲ませてる。
さて行く人よ、どなたでも、あの大口に盃を、
きらめく液を、徳利を、またセルヴラを、ジャンボンを、やってください、
地下の霊、なお感情をもつならば、
いま摘みたてのゆりよりも、よっぽどそれを好みます。
註:現代仮名遣いに変えて記載しています。
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BGM:うつろの心
MIDI作者:Windy
http://windy.vis.ne.jp/art/
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フランソワ・ラブレーの墓碑銘
   ピエール・ロンサール
1524〜85年、宮廷外交官を辞し、古代ギリシャ詩などを模範とした新しいフランス詩の創始を目指した。現在ではフランス近代抒情詩の父と評価されている。
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