続・ギリシャ抒情酒詩
我飲む時は我が心清く
盃を傾くる時は我が心たかまり
楽しき流れとしてたかまる
そは唯世の交流を知る人のみ知る
若人相集まり胸襟をひらきて語り
心と心とを一にするとき
楽しみやまさに我が心なり
かかる時はキューピットの神も天を捨てて降り
女神ベヌスも酒神バッカスも
この席に来て薔薇の微笑をそそぎ給う
彼の宴席に栄光あれ
歓楽は酒より輝き出ず
若き楽師我が琴に合わせ歌う
紅き酒盃回るときは楽の心も調子を合わせよ
共にあたたかき心合わせまどかに酌めや
アルカイオスと同じ紀元前6世紀にギリシャで活躍したた抒情詩人・アナクレオンならびにアガティアス、アナクレオンテアの酒の詩を紹介します。アナクレオンはほとんど酒と恋をテーマに、常に遊び心を忘れずに詠うことで人気があり、この詩風は後世でも模倣者が多く、いわゆるアナクレオン派を生むことになりました。
また、その詩や彼を題材に歌曲などが作られ、現在でも演奏されています。そして、「バラなる花は恋の花、バラなる花は愛の花、バラなる花は花の女王」とバラを賛美した詩でも有名です。 由 無
参考:呉茂一訳『ギリシャ抒情詩選』(岩波文庫)
アナクレオン
ANAKREON
AGATHIAS
アガティアス
バイロン「ギリシャの島」より
(阿部知二訳)
なみなみと、高杯にサモスの酒をみたせよ
われら、かかることを思ふをやめん
そは、アナクレオンの唄を聖ならしめぬ。
彼は仕へぬ――ポリクラテスに、僣王に
されど、われらが主は、そのとき
少なくともわれらが同胞なりき。
うま酒を のめばや
ものもひも やすらはむ、
なげかひも いたはりも
ものもひも 何せむに。
あらがふも つひに死ぬ
身のいかで 世にまよふ。
さればいざ 君われと
よきバッコスの 甘酒をのまむ、
汲むほどに 飲むほどに
ものもひも やすらふと。
アナクレオンテア
私はお酒は好きでなし
飲ませてやろうというのなら
先に味わい飲まれたし
さすればお受けいたしましょう
君が唇を触れたなら
もはや酒杯をひかえることも
甘き酌童を逃れることも
はたすは容易ならぬこと
酒杯が君のくちづけを私に運び
杯の受けしめぐみを伝えますれば