19世紀ドイツの歴史作家であるC・Fマイヤーは、抒情詩人としても高く評価されています。
 その中に大地に実る葡萄・酒への力強い讃歌もあり、2編をここに紹介します。
                              由 無
       参考:村上文昭編『ワイン頌詩集』(中央書院)
         『ドイツ文学案内』(岩波文庫9
マイヤーの葡萄讃歌
ヴェルトリンの葡萄の房 
熱い沈黙がじりじりと
谷や山の背にたてこめている。
酒神の祭の歓声も葡萄摘みの人々の輪舞も
たわわな房の中にまだまどろんでいる。

赤紫のヴェルトレンの葡萄の実よ、
太陽光の中にたぎっている。
今日私は葉かげにのぞいている
御前のふっくらと満ちた実になりたい。

その時大地の力に張り満ちた
私の抑へがたい血潮は、
大空のめぐみに酔うて、
皮さへほとんど破りもしよう。

葡萄の棚から垂れ下り、
熱くみづみづしく丸まると、
私は黒紫に光り輝きながら、
受け取らうとする赤い唇の上に漂ひもしよう。
高安国世訳
 コンラート・フェルディナント・ 
 マイヤー
1825〜98年、スイス生まれの作家。イタリアに旅行し、ミケランジェロに私淑したことが、作品の形式美に影響した。
歴史小説はルネサンス時代の人物を中心に描いている。
Conrad Ferdinand Meyer
十一月の太陽 
呻くようにきしみながら
葡萄搾りの桶がまはる、
私のリンデの古木の下に
積もった木の葉があふれている。

大地の仕事は終り、
もう冬の憩ひが始まっている――
太陽よ、まだ色あせぬ
金の光を矢と注ぎおん身はめぐる。

作男から、刈り入れの人、
そして最後に葡萄酒作り、
今やおん身は自由の騎士、
たのしく気儘の旅をする。

そして酒飲みに来る
学生たちは居酒屋の店先に
たむろして声たからかに
おん身を讃へる、詩の神アポロ。
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