中世ラテン詩を収めた『カルミナ・ブラーナ』がドイツのミュンヘン郊外の修道院で発見された。本来歌われるための歌謡が多く収められちいるが、ここに紹介するのは酒場で放歌高吟する陽気な飲酒詩である。中世ドイツの大学生がで好んで歌っていたという。  由 無
     参考:沓掛良彦『讃酒詩話』(岩波書店)
中世ラテンの酒場歌
俺たちが酒場にいるときにゃ
俺たちが酒場にいるときにゃ
この世のことは気にならず、
早速賭博に手を出してそれに憂き身をやつす。
金さえ出せば飲ませてくれる
酒場とはどんなところか、
問うてみにゃなるまい。
さはさあれ、お聴きあれ俺の言うことを。

打つやつ、飲むやつ
無頼な暮らしを送るやつ。
博打にふけって身ぐるみ剥がれるやつもいる。
着物にありつくやつもいりゃ、
南京袋を着るやつもいる。
死なんざ誰も怖がらず、
酒神におのれの運を賭ける。

まず酒杯を上げるのは酒代のため、
それがあるから放埓なやつらが飲めるから。
次いで囚われたやつらのために飲み、
三番目にゃ生きとし生けるもののために飲む。
四番目にゃキリスト教徒全部のため、
五番目にゃ信心深かった死者のため、
六番目にゃ浮世ずれのした尼さんのため、
七番目にゃ森に棲む追剥ぎどものために飲む。
八番目にゃ堕落した坊主どものため、
九番目にゃ遊歴する修道士どものため、
十番目にゃ船乗りたちのため、
十一番目にゃ喧嘩好きのやつらのため、
十二番目にゃ罪を悔いたやつらのため、
教皇のためにも王様のためにも、
みんなが無差別に飲む。

女主人公が飲む、旦那が飲む、
兵士が飲む、坊主が飲む、
あの男が飲む、あの女が飲む、
下男が下女と飲む、
はしこいやつが飲む、怠け者が飲む、
白いやつが飲む、黒いやつが飲む、
腰をすえたやつが飲む、うろつくやつが飲む、
無学なやつが飲む、司祭が飲む。

貧乏人と病人が飲む、
国を追われたやつと見知らぬやつが飲む、
子供が飲む、老人が飲む、
司教が飲む、司祭が飲む、
老婆が飲む、母親が飲む、
この女が飲む、あの男が飲む。
百人が飲む、千人が飲む。
(沓掛良彦訳)
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みんながきりもなく
こう大酒を飲んだ日にゃ、
いくら陽気に飲んだとて、
六百貫の銭もたちまち消えうせる。
こうして俺たちゃみんなにたかられ、
文無しになるという次第。
俺たちにたかるやつらは非難されて、
義人とは一緒になるな。