酔いどれ江戸川柳
江戸川柳における酒の詠われ方はやや品が
ないものが多いのですが、庶民は居酒屋で濁り酒をひっかけて
酔狂を愉しみ酔郷に浸ることで、明るくたくましく生き抜いてきた様子が伺えます。この様相は脈々と現代のサラリーマンに引き継がれていますね。「酒なくて何のおのれが桜かな」 由 無
参考:神田忙人『江戸川柳を楽しむ』
忍ぶれど色に出にけり盗み酒
酒なしで見れば桜も河童の屁
禁酒して見れば興なし雪月花
禁酒して何を頼りの夕しぐれ
思案して呑んで酒にまた呑まれ
駕かきも新酒の里を過ぎかねて
ひげ面であま酒を飲むみともなさ
ぼた餅をこわごわ上戸ひとつ食い
つまるところ酒屋ための桜咲く
銭のあるふりで居酒を飲んでいる
居酒屋でねんごろぶりは立って呑み
八文は味噌を片手へ受けて飲み
八文が呑内馬はたれて居る
そりや出たと子供のさわぐ居酒見世
小判にて飲めば居酒も物すごし
手をわけて酒屋尋ねる野がけ道
酒屋の戸銭で叩くはなれた奴
起きていて寝たふり酒屋上手なり
いい酒屋ほど貧乏をたんと持ち
仲なおり元の酒屋へ立帰り
あれだよと酒屋を起こすご高慢さ
かんにんがじまんで出した居酒みせ
居酒屋のとなり産婦へ手をあてる
徳利は井戸へ身投げの冷やし酒
大御無沙汰と柄樽の後へ来る
酒樽もすでにさいごのいきづかい
たいこ医者お燗の脈をみるばかり
薬代を酒屋へ払う無病もの
どぶろくとおでんは夜の共かせぎ
雛の酒茶わん飲んで叱られる
きき酒をぐいぐいのんで叱られる
生粋はおどかすやうなおくびをし
生酔いの杖にして行く向ひ風
二日酔い飲んだ所を考へる
酔覚めの水のうまさや下戸知らず
いうこともなくてつまらぬさし向い
女房を湯へやり亭主酒を飲み
悪い酒飲むと柄へ手をかける
お手前らあんどんの燗酒知るめえが
村ぶげんすみ酒ばかり飲んでいる
侍が酔て花見の興がさめ
大生酔を生酔が世話をやき
甚五郎酒が好きかと御用聞き
神代にもだます工面は酒が入
神に下戸なし仏には上戸なし
兼行はなんといっても飲めるやつ
剣菱も百万石もすれ違い
智勇けんびして居酒店を出し
菊水は菰っかぶりに過ぎた紋
元服の祝儀は酒も男山
有りやなしやと振ってみる角田川
八文:立ち飲みの酒代
たいこ医者:やぶ医者
生酔:酔っぱらい
李太白:酒好きな唐の詩人
神代:スサノオが大蛇を酔わせて退治
菰っかぶり:酒樽の菰を被った乞食
すみ酒:清酒(大衆は濁酒中心の飲酒)
百万石:前田藩の殿様
けんびして:兼備と剣菱をかけた言葉
剣菱、菊水、男山、角田川は酒の銘