酒色江戸川柳
江戸時代後期には、町民の生活レベルが向上し、食生活も大きな進歩を遂げました。奈良酒から始まった諸白、さらに伊丹の清酒など美味い酒も登場しています。上方から江戸へと樽廻船が酒を大量に運搬するような物流体制もで出来上がっています。
上戸(酒好き)は1日平均3合くらい飲んでいた勘定になるそうです。一合の値段は、現在に換算して、立ち飲み150円位、お銚子1本230円位、上酒450円位、また、おでん一皿80円位だそうです。居酒屋で田楽を肴に立ち飲みするスタイルも一般化しているのです。
一方、吉原の遊郭などでの遊びも盛んでしたし、茶屋がそのような遊びの役割ももって繁盛しています。『東海道中膝栗毛』の弥次さん北さんも、行く先々で酒、肴、女を楽しみに珍道中を繰り広げる物語です。本編では江戸川柳の中でも、酒と女がからむものをまとめました。 由 無
参考:永山久夫『酒雑学百科』『酒の肴雑学百科』
鉢巻で女房に願う迎い酒
女房の留守塩辛で呑んでいる
下戸へ礼いって女房はそ引きこみ
あくる朝女房はくだを巻き戻し
酔ったあす女房の真似をする恥しさ
女房は酔わせた人をにじに行き
女房の留守塩辛で呑んでいる
手ばなしでつけさしを呑む馴れたもの
無理につぐ酌は女の力わざ
右に撥(ばち)客を酔わせる左り酌
生粋を扱わせては年増なり
酒はさめ新造は眠る火はきえる
新造も新酒も人のさめやすし
いうこともなくてつまらぬさし向い
ひや酒の肴にかむろしかられる
盃をさせばうなずくひきがたり
生酔になってかげまを一度買
鼻紙で起こす火鉢の別れ酒
油灯臭いきぬぎぬの茶碗酒
酔うて立つ女の裾のにぎやけき
花嫁を冷と燗のあいへ出し
赤いかと御菜に顔を見て貰ひ
かむろ:遊女の世話をする少女
新造:遊女の見習い、新妻
かげま:男娼
御菜:奥女中の下男
にじに行き:ねじこむ