岸本水府と露の五郎酒川柳
 戦前から大阪の川柳結社「番傘」を主宰した岸本水府(1892〜1965年)の酒句を紹介します。彼は戦後、コピーライターとしてもグリコの豆広告(新聞1段15行)を書くなど有名でした。
 一方の露の五郎さん(1932年生まれ、2005年襲名で露の五郎兵衛)は関西の落語家で川柳に長け、酒宴を愉しむ軽妙な句が多いようです。                         由 無
  参考:『道頓堀の雨に別れて以来なり』(田辺聖子、中央公論社)    『露の五郎川柳句集』(東方出版)
        
酔つぱらい真理を一ついつてのけ
飲むほどに家が汚くみえてくる
美しき指みな動く酒の燗
元旦の酒はあつぱれこがね色
ことしはいいぞ大盃をぐつとほす
ねじつけて酌をするのは男同士
この上のめでたさ母が飲んでさし
五十銭で飲んだ時分の鴈治郎
晩酌の処へ帰る二階借り
上燗屋酔ふた酔ふたを聞き飽きる
盃は淋しからずや友かわる
愁ひの子を知らず父と酒をのむ
免職の友を見舞へば酒臭き
四十年かかつて酒は毒と知る
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岸本水府
顔ぶれがそろたそろたと酒になり
ほろ酔いの頬に梅が香のせて東風
もう泣かぬ泣かぬと酔ふて泣いている
晩酌は晩酌にして外は外
わけもなく先ず乾杯だ乾杯だ
からみ酒ごてる奴ほど先に酔う
顔中をクシャクシャにして「この味や!!」
ささくれた心を包む酒に酔い
酔眼がすわって口説き怖くなり
賑やかな友と別れてからの酔い
仲のええ御神酒徳利やったのに
親友を悪友にして午前さま
酔いました酔うたさかいに言うけどな
舞扇貸してと持てる下戸もあり
不意の客スルメの足と茶わん酒
露の五郎
コドモハカゼノコ グリコノコ
ツノダセヤリダセ グリコダセ
グリコモラッテ タノシーケレ
ジャンヶン グリコ
ダレニモヤレヌ ダイジノグリコ
岸本水府の豆広告コピー