川上三太郎の酒川柳
 川上三太郎は明治24年東京生まれで、昭和43年に78歳で永眠した川柳作家です。明治、大正、昭和、戦後にかけて川柳一筋に生き、現在の川柳ブームの礎を築いた人物です。
 酒に関しては、冬でもコップで冷酒をあおる酒豪であり、酒句も多く作っています。                    由 無
    参考:林えり子『川柳人 川上三太郎』(河出書房新社)
        
身の底の底に灯がつく冬の酒

やわ肌も熱燗もよし猪八戒

酒とろりおもむろに世ははなれゆく

身ぶるいをさせて冷酒の行くところ

酒うまし汲めども尽きぬ夜うまし

酌もせずさせず久しい酒の店

独り酌読む眼やすめて一人つぐ

酒きびし深夜孤を孤に徹しきる

もう一つあたまがほしい二日酔

泥酔をじっと見ている子の凄さ

買いそうで女房酒を買わぬなり

やや酔いし女の指輪贅と見つ

ほろ酔の妓よ唄やるな唄が泣く

酔心地瞼閉ずれば灯の反射

二日酔魂一つ鼻の先

一匹狼酔えど映らぬ影法師

一匹狼天に叫んで酒を恋う
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