良寛ほろ酔い歌
 江戸時代後期、諸国を行脚した禅僧・良寛は短歌、俳句、漢詩、そして書に長じました。芸術を、自然を、人を愛して飄々と修行を積んだ良寛の生き方に惹かれるものがあります。
 生前の良寛を知る解良栄重は「師常に酒を好む、然りと雖、量を超えて酔狂に至るを見ず」と語っており、また「ほろ酔ひの足もと軽し春の風」の自句にもあるように、ほろ酔い程度の酒を好んだようです。禅僧にはあるまじき飲酒…といえますが、一休宗純と同様に、逆に僧・良寛の人間らしさが伝わってきます。
 本編では私も教わったことのある東郷豊治先生(元・大阪外国語大学教授)が著わされた『良寛歌集』の中の「人と酒を酌む」の項から酒の短歌をほぼ収載させていただきました。          由 無
           参考:東郷豊治『良寛歌集』
にひむろの新室の新室の祝(は)ぎ酒に 我酔ひにけりその祝ぎ酒に

さすたけの君がすすむるうま酒に われ酔ひにけりそのうま酒に

さすたけの君とあひ見てけふは酔ひぬ この世になにか思ひ残さむ

うま酒を飲みくらしけり同胞(はらから)の 眉白たへに雪の降るまで

さけさけと花にあるじを任せられ 今日もさけさけ明日もさけさけ

よしあしのなにはの事はさもあらばあれ 共につくさむ一杯の酒

あすよりの後のよすがはいざ知らず けふの一日は酔ひにけらしも

夜もすがらつま木たきつつ円居(まろい)して 濁れる酒を飲むが楽しさ

漢詩(からうた)を作れ作れと君は言へど君し飲まねば出来ずぞありける

百鳥(ももとり)の木伝うて鳴くけふしもぞ 更にや飲まむ一杯の酒

蛙(かわず)鳴く野べの山吹たをりつつ 酒に浮べて楽しきをつめ

大御酒を三杯五杯たべ酔ひぬ 酔ひての後は待たで注ぎける

ここつかにつけのよろしき忍び草 酔ひてや酔ひぬ人強ひずとて

ひさかたののどけき空に酔ひ伏せば 夢も妙なり花の木の下

うま酒に肴持て来よいつもいつも 草の庵に宿は貸さまし
    良 寛
1758〜1831年
越後国出雲崎生まれ、備中・玉島で禅を修行、38歳で帰国して国上山の五合庵に住む。晩年70歳で29歳の尼貞心に恋慕される。
 
創作句集 
創作詩集りべーら
平成吟醸会メモリアル
良寛ほろ酔い詩
酒の詩歌句集目次
大伴旅人・酒を讃むる歌
良寛ほろ酔い歌
中世の酒宴歌謡
一休の風狂酒詩
古事記・酒楽の歌
田植え酒歌
狂言酒歌謡
良寛ほろ酔い詩
欧州
中東
中国
俳句
中南米
米国
民歌謡
粋歌
川柳
古詩歌
短歌
酒歌つれづれよしな記