吟醸抄 
狂言酒歌謡
 室町時代の15世紀前後に誕生した狂言といえばセリフが中心ですが、歌舞の要素も多い。
 その中に酒の歌謡があります。召使いの太郎冠者らが酒盛りする場面や酒の功徳を詠ったものなどです。 庶民はハレの日に年に数回、酒を飲める時代のことですから、酒をめぐる悲喜こもごもが描かれているのです。(大蔵流・善竹隆司師) 
 狂言師の茂山千之丞さんが『酔っ払い読本』(吉行淳之介編)において「狂言の中からお酒を除いてしまったら、その魅力は半減するかもしれない」と記されているほどです。          由 無
  参考:新日本古典文学大系『梁塵秘抄・閑吟抄・狂言歌謡』
 
 餅 酒

アド 松の酒屋や梅壺の 柳の酒こそすぐれたれ
シテ 年々に つき重ねたる舞の袖 返す袂や熱すらん
2人 やらめでた そもそも酒は 百薬の長として 寿命をのぶ
   その上酒に 十の徳あり しよかうに慈悲あり 寒気に衣あり
   推参に便りあり さて又餅は 万民に用いられ 白銀黄金 
   所領持 白銀黄金 所領の上に なを国持こそ めでたけれ                           

 樋の酒(太郎冠者物)

冠者たち よも尽きじ よも尽きじ 薬の水も泉なれば 汲めども汲めども いやましに出る菊水を 飲めば甘露もかくきゃらんと 心も晴れやかに 
飛び立つ斗(ばかり)有明の 夜昼となき楽しみの 栄花にも栄耀にも 
実比上やあるべき


 酒講式(出家物)

シテ そもそも、さけにはくゆふの徳あり、茶にりんかくの情有、
   仏雪山の 出し時、寒風激しかりしに、民糟という物を暖めて
   参らする、されば師馳月八日のうんざうは、かのたいこうを学べれ
   り、うんざうとは、糟とは温むると書きたる也 糟だにも
   重宝なれば まして信真の酒は 心にも述べがたし

シテ 又仏の御弟子に、比丘には酒を許すとありしかば、旦那のもとに
   行、あまりにあまりに入ばりし、仏所に帰るが帰りへで、
   賤しき泥に伏しまろび、蛭蛙に身を吸われ市、報ひの程を知らし
   めんがために、飲酒戒とは戒めたり、但し隠すが秘事ぞとよ
   隠しても隠し甲斐なき赤み上戸は 笑止の物也

シテ 又極寒極熱とて、熱き苦も有、寒き苦も有、極熱の照りに照るに、
   冷やし物に酒を冷やし、一盃は飲み足らず、二盃は数悪し
   三盃斗飲みぬればいかなる閼伽陀薬、蘇香円潤体円と申たり共、
   よも酒にはまさり候べき 又極寒の折節は 濁り酒が重宝で
   燗の程をしすまし 三盃四盃五六七八盃 十盃斗飲みぬれば
   額に汗はじりじりと 垂木のつらら劣るまじ 風さんそんは身を
   去るべし かかる目出度講の式 是を見聞かん旦那は 貧僧を
   供養せば 命とともに長持ちの 酒酔ひは憎みそよ 是こそ
   酒の講の式よ 能聴聞し給へ よくよく聴聞し給へ



  
創作句集 
酒の詩歌句集目次
うんざう:お粥
大酒飲みの住職(シテ)に子供を預けた親が
意見するが、逆に酒のありがたさを説く
大伴旅人・酒を讃むる歌
良寛ほろ酔い歌
中世の酒宴歌謡
一休の風狂酒詩
古事記・酒楽の歌
田植え酒歌
狂言酒歌謡
良寛ほろ酔い詩
創作詩集りべーら
淀風庵へのお便り
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