万葉集の酒歌
万葉集に記載の4千5百首のうち酒を詠ったものは40首程度ですが、平城京には酒肆もあり酒宴を大いに楽しんでいたようです。 由 無
参考文献:佐佐木信綱編『新訓万葉集』、二戸儚秋『日本酒物語』
味酒(うまさけ)の三輪の斎(いは)ひの山照す秋の紅葉散らまく惜しも(長屋王)
古りにし人の賜(たば)せる吉備の酒病めば術なし貫簪(ぬきす)賜らむ(丹生女王)
君が為醸みし待酒安野(やすのぬ)に独りや飲まむ友無しにして(大伴旅人)
青柳梅との花を折り挿頭(かざ)し飲酒みての後は散りぬともよし
梅の花夢に語らく風流(みや)びたる花と吾(あれ)思ふ酒に浮べこそ
如是(かく)しつつ遊び飲みこそ草木すら春は咲きつつ秋は散りぬる(大伴坂上郎女)
酒杯に梅の花浮べ思ふ達(どち)飲みて後には散りぬともよし(大伴坂上郎女)
官(つかさ)にも許し給へり今夜のみ飲まむ酒かも散りこすなゆめ
天地の久しきまでに万代に仕へ奉らむ黒酒(くろき)白酒(しろき)を
橋の下照る庭に殿建てて酒宴(さかみづ)き坐(いま)す我が大皇かも(河内女王)
味酒の三諸(みもろ)の山に立つ月の見が欲し君が馬の足音(あと)ぞする
五十串(いぐし)立て神酒座(す)え奉る神主部(かむぬし)の髻華(うず)の
山蔭見れば乏しも
味飯(うまいひ)を水に醸みなし吾が待ちし代(かひ)は曽て無し直(ただ)にし
あらねば
皇祖神(すめろぎ)の遠御代々々はい布き折り酒飲むと云ふぞこの厚朴(ほほがしは)
●貧窮問答の歌(山上憶良)
風雑(まじ)へ 雨降る夜の 雨雑へ 雪降る夜は 術(すべ)もなく 寒くしあれば堅塩を 取りつづしろひ 糟湯酒 うち啜ろいて 咳(しわぶ)かひ 鼻びしびしに しかとあらぬ 髭かき撫でて 我を除(お)きて 人はあらじと 誇ろへど 寒くしあれば 麻襖(あさぶすま) 引き被(かがふ)り 布肩衣(かたぎぬ) 有りのことごと 服襲(きそ)へども 寒き夜すらを 我よりも 貧しき人の 父母は 飢え寒(こご)ゆらむ 妻子(めこ)どもは 吟(によ)び泣くらむ 此の時は 如何にしつつか 汝(な)が世は渡る
俳句 淀風庵