俵万智の酒歌
佐佐木幸綱を師として、師に劣らぬ酒好きの俵万智さんの酒に想いを託した短歌です。俵さんは、現代の生活において酒が醸し出す彩を軽妙なタッチで詠っています。
由 無
参考:俵万智『サラダ記念日』『英語対訳版サラダ日記』
にわか雨を避けて屋台のコップ酒人生きていることの楽しさ
目を閉じてジョッキに顔を埋める君我を見ず君何の渇きぞ
酔っていた君の言葉の酔い加減はかりかねつつ電話をまつも
「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの
コップ酒濱の屋台のおばちゃんの人生訓が胃に沁みてくる
生ビール買い求めいる君の手をふと見るそしてつくづくと見る
オクサンと吾を呼ぶ屋台のおばちゃんを前にしばらくオクサンとなる
地ビールの泡(バブル)やさしき秋の夜ひゃくねんたったらだあれもいない
にごり酒きゃしゃなグラスに満たされて小諸の夜は更けやすき夜
イタリアンパセリの匂い口づけを白きワインで洗い流せり
旅人に優しき酒場ベルギーのビールが言葉になる夜もある
『サラダ記念日』より(20〜24歳作)
俵 万智
1962年大阪生まれ、早大第一文学部卒、著書に『百人一酒』あり。
『チョコレート革命』より(28〜34歳作)
俳句 淀風庵
『サラダ記念日』英訳版より(Translation by Jack Stamm)
Snow shelter under a little street-stand,a glass of sake…
What a happy,happy thing, to be, and be alive.
Now way of telling whether your words were loaded as you seemed
to be. Anyway, I sit and wait for the phone to ring.
Are you all right? After chugging down a mere two cans of Chu-Hi,
coming right out and saying “I want you to be my wife.”