吟醸抄 
現代韓国の酒詩
 1921年生まれで現・筑波大東京高等師範の卒、仁荷大学の名誉教授になった趙炳華の短詩と、1935年生まれで、新聞社や出版社に勤務し40歳を過ぎて処女詩集を出版した黄明杰(ファンミョンゴル)が詠んだ酒詩を茨木のり子さんの訳で紹介します。
 後者の詩は、厳しい現実を乗り越えて生きてゆこうとの意志を焼酎のように…と詠っています。
                              由 無
      参考: 『韓国現代詩選』(花神社)
                              

 
 「無限」
 私はいつも見えないものを求めて さすらってきた
 あの地平線のかなたにも村があるだろうか
 そこにも居酒屋があるだろうか
 
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趙炳華
黄明杰
 「焼酎のように冷たく熱く」
 たとえ酒は呑もうとも
 焼酎のように冷たく熱く
 この世を生き抜いてゆこうとした
 ところで今日はどうしたわけか
 何杯かの酒にしどろもどろ
 酒までこぼすていたらく
 とうとう通りでぶっ倒れた
 星もさむざむとふるえる夜
 町は隅々まで切り裂くような刃の風で
 ごたついていた今日の昼の
 うそ寒い事態のように
 すべてのものが氷りつく
 硬くこわばってゆくからだ
 寒さが血を凍らせて
 風が皮膚を抉ってゆく
 しかしだ シベリヤの極寒も
 血の流れを止めることはできず
 皮膚を切る風の刃いくら深くたって
 熱い内臓は取り出せないだろう
 それは星がいくら寒さにふるえても
 落っこちてこないのとおんなじだ
 おもえば あんなにも活発にいきいきと
 廻っていた輪転機
 あんなにも元気よく声はりあげて町を
 走り出す新聞売りの少年
 彼のように起き出さなければならない
 のんだくれ 冬の酔っ払いめが
 氷点下のこの町で
 よしんば酒を飲むとしてもだ
 浮き世や 焼酎のように
 冷たく熱く 冷たく熱く

 
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