湯崎 息
(俳句淀風庵)
ある元旦記
 大晦日の食事は、中盛めし30円、豚汁20円、クラッカー30円。計80円也。風呂は行かず。
元旦、目を覚ましたのは正午近くであった。3時頃、ガス工場の灰色の高い塀の下の埃っぽい道を歩き、前後に二本ずつの日の丸旗を付けた市街電車に乗り、南の繁華街に着く。
 女給達は島田を結ったり一層艶やかな着物とかドレスに身をつつんでホールに集まった。かれこれ百人も居ようか。
 
 本年もますます当サロンが繁盛して日本を征服するように乾杯! 支配人の音頭で女達は一斉に白い腕とコップを上げた。
 
 新年会を済ますと、私達ボーイは早速、ビールビン、コップ、テーブルなどをすっかり片付けた。バンドがオペラ開幕の序曲のように「カプリ島」を演奏しだすと、ぼつぼつ客の登場でである。幕は上がったのだ。
 
 これからが見ものである。今夜も酒と女とバンド音楽のカクテルに酔っぱらうだろう。私の夢を昇華するために?
 
 エらっしゃいませ。お二人さん御案内!


 
(ヨウアリスクカエレチチ  一月一 コ 五、三〇)
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