湯崎 息
(俳句淀風庵)
 大漁旗
夜 深々と 山の峰
ひとりの男 突っ立つ
降りかかる星 白い息を吐く月
男 裸足ではないか
目は天空に叫んで 感覚は遠く澄み渡る
夜の山
これを見ろ!
漁船の上に生きる物を
これを聞け!
漁の象徴の雄叫びを
黄金の旗にも勝り 金蘭の緞帳にも勝る
黒煙に生への力を得て
北西の季節風の試練を受け
塩と油にまみれる 
君こそ大いなる存在

君はすべてを知っている
真っ黒の男たち もりあがる筋肉 流れる汗を
彼らの海への怒鳴り声 獲物への鋭い眼差しを
立ったままで飯を続けざまに放り込むを
網を抱え込み たくみに針を動かすを
夜になると船から消え去る足音を
頬巻き 手拭 ドテラ 腹巻、ゴム前掛け、長靴
飯ごうの男たちに
酒飲みであろうと 暴れ者でも 街に遊び耽った者にも
希望、勇気、快活を謳わしむ
君こそ大いなる存在

いざ なびけ! 大漁の旗よ
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