市街電車は揺れて
目をつむった男は
傷口を突き刺すような陽と
埃っぽい騒音に
頭が がたんときた
ゼンマイだ! 油だ!
ネジはどうした
めんどうだ ハンマーをよこせ!
ぶっ壊すのだ
男のしなびた脳みそが散り
目の玉が飛び出した
待っていたとばかり
太った奴が ぽんと蹴落とした
電車は走り続けている
砕かれた男
湯崎 息
洗 剤
この俺の顔を洗い落とせ
洗剤はないか
一皮むけば俺の過去の顔だ
あの未来を吸収しようとした
清清しい顔があるはずだ
畜生の体臭を洗い落とすのだ
そんな洗剤はないか
(俳句淀風庵)