湯崎 息
(俳句淀風庵)
けんか
バラック地帯に喧嘩がおこると
そこらの家から総出で見物に行く

子供たちのそれは神妙な眼
○○組のハッピ男は腕組みをする
浴衣の若旦那はまたかと覗く
婆さんがどうしたねと顔を出す
奥さん連中がこそこそとやる

一人の男が叫ぶ
「こらあ、うちのもんでぇ」
隣の女が泣きわめく
「なにいってんの うちのもの盗みやがって」
家の中で赤ん坊がワンワン泣く

そのうち警察官がやってきて
「困るねぇ」という
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真鋳の男
真鋳のような面した男
ありゃ人間だろうか
目と鼻がない
頑丈な動物の歯がニッと出る
手も胸も褐色だが
シャツやズボンも油だらけ

その男は夕方
夕風に送られながら威勢よく
地下足袋を鳴らして戻る
バラックの子供たちは彼をじっと見る
子供と女房が汚い顔や汚い手で駈けよる
男は無表情で
そして子供を抱き上げる
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酒歌つれづれよしな記