湯崎 息
(俳句淀風庵)
老農夫
老農夫は見つめます
鍬がそれをサッと砕いた
今、彼の目は他に何物も欲しない
その無味なものよ
何を与えるのだ
頭はからっぽじゃないのか
未来をやらないのか
北風と迫りくる夕闇に
同調しようとしているではないか
いや、これを見よ!
鍬と生きてきた
土の塊と生きてきた
沈黙と生きてきた
あたりに彼の精が踊っているではないか
ミミズ
なまぬるい感触
俺はミミズをちょんぎった
冷たい鉄が乾いた土くれに
さあっと下りると
ミミズは赤くにじんだ腹で
命を求めて
それから
土に埋もれただろうか